2026.5.15

コーア・クリントってどんな人?

レ・クリントを語る上で重要な人物の一人であるコーア・クリントをご紹介します。

多才な人物、コーア・クリント

父は、コペンハーゲンのグルントヴィ教会の主任建築家P.V.イェンセン=クリント。コーアは、父親と建築家カール・ピーターセンに従事し、建築を学び始めます。特にカール・ピーターセンからは古典的なリアリズム(ありのままを見つめ、表現するという考え方)を教えられました。

建築とともに家具のデザインも手掛けるようになり、コーアは適切な寸法の家具を製作するため、人体の寸法と動きに興味を持つようになります。その後も機能的で体にフィットする時代を超えた実用的な家具デザインを数多く生み出していったのです。

1924年にデンマーク王立美術アカデミーの家具デザイン学科の講師、1944年には教授に就任しています。

建築家や家具デザイナーとしての顔を持つコーアは、「デンマークモダン家具デザインの父」と称され、後の時代のデザイナーらに多大な影響を与えています。

写真上段右端がコーア・クリント、左から2番目は兄のターエ・クリント。撮影しているのはおそらく父親のP.V.イェンセン=クリントと言われています。

1920年から1926年には、別の建築家とともにロココ様式建築の旧王立病院を旧デンマーク工芸博物館(現デザインミュージアム・デンマーク)へと改修。そして、全ての内装を手掛けただけではなく、一時期はその場所を生活と活動の拠点としていました。1944年、コーアはこの博物館のために《モデル101》をデザインします。その後2020年から2022年にかけて再びミュージアムの大規模な改修があった際には、デザインを担当したOEO Studioの提案によって《モデル101》を引き続き使用することが決定したのです。コーアが引き継いが伝統が脈々と受け継がれています。

   

旧デンマーク工芸博物館に飾られた《モデル101》

   

現在のデザインミュージアム・デンマーク。そしてOEO Studioデザインの《CELINE》も

レ・クリント社でのコーア・クリントと《モデル101》

1943年、コーア・クリントの兄であるターエ・クリントがレ・クリント社を創設します。ターエが主にランプシェードの技術原理の開発を担当、コーアは照明デザインをはじめ会社のロゴやパッケージなどもデザインしていました。また、コペンハーゲンの店舗にはオレゴンパイン材の家具もデザインするなど、お客さまへ照明の販売を通じて、総合的な体験を重視していたことがうかがえます。

(左)商品のパッケージ (右)オープン当時のコペンハーゲン店舗

1930年代から、コーアは紙を折って円形にし、光源を完全に閉じ込めたペンダントランプのデザインに取り組んでいました。これが先述の《モデル101》、通称「ランタン」です。1944年に発売されました。当時、長方形の紙を美しく複雑な構造を持つ立体的な球体に折り畳んだことは、信じがたいことでした。

庶民の家具 vs. 完璧への欲求

コーア自身は家具という概念に共感はしていたのですが、完璧主義と高品質へのこだわりが、彼の仕事を妨げることにもあったようです。例は彼が好んだキューバ産マホガニー。これを使った家具などは、大衆向きとは思えません。ですが、多くの人に手が届きやすい素材と彫刻的な表現の両方を巧みに操ることができるのがコーア・クリントです。その好例が《モデル101》。紙という素材で革新的な方法で光を遮り、機能的で美的にも優れたランプを実現させました。

Kaare Klint

コーア・クリント